関西Student Library(関西SL)紹介
関西SL。この名前を初めて聞いたとき、誰もがイメージしてしまうのは、おそらくあの蒸気機関車でしょう。では、関西SLとは、蒸気機関車に関する団体なのでしょうか?いえいえ、それは違います。SLというのは、Studennt Libraryの頭文字をとったもの。直訳すれば、学生図書館ってことになります。でも、だからといって図書館というわけでもないのです。
では、関西SLがどういう団体なのか、ここでご紹介しましょう。
1.関西SLの歴史
1971年、京都市内の大学に3人の視覚障害学生が点字受験によって入学しましたが、入学後、点字の教科書をはじめ、彼らが大学で学習・研究を進めていくために必要な条件がほとんど保障されていませんでした。そこで、彼らは「みんなと同じく勉強したい。」、「本が読みたい。」などの要望を胸に、京都ライトハウスに集い、それを知った京都大学の点訳サークルが中心となって、教科書点訳を始めたのが当団体の出発点です。
その後、点字教科書や参考資料の点訳の保障、点字ブロックの敷設や授業時の配慮などの学内環境整備を大学側に要望する活動を行ってきました。また、視覚障害学生のニーズや学内環境整備の実態を把握するためのアンケートも実施してきました。この他、点字による司法試験の受験を求めたり、仏和辞典の点訳をしたり、京都府立図書館に視覚障害者に対するサービスの充実をもとめたり、会員の駅ホームからの転落事故をきっかけに、通学路の安全を考えて、大阪市営地下鉄全駅を調査し、設備の改善を求めるということなどにも取り組んできました。
近年では、2001年に視覚障害学生と彼らを受け入れている大学側に対して、学内環境アンケートを実施しました。これは、視覚障害学生が就学上どのような点に困っているのか、また、大学によって異なる視覚障害学生への対応などを調査したものです。この調査を通して、その現状を把握することで課題を明確にし、その課題解決に向けた議論を学習会等で展開しています。これは今後の問題解決に向けての重要な指標となることと思われます。
2.関西SLの活動とその目的
関西SLは、関西圏の大学に通う視覚障害学生と複数の大学の点訳サークルのメンバーを中心に組織している団体です(2001年度の会員数は105名)。
関西SLでは、学習会を年に4回程度実施しています。各学習会では、視覚障害学生が抱える様々な問題に取り組んでいますが、特に、視覚障害学生が学習・研究を行っていく上での問題に重点を置いています。この学習会は、大学ごとに異なる学内環境などに関する情報を交換しあう場であり、そこで取り上げられた問題点を大学側に示し、速やかな問題解決・改善を関西SLとして要望しています。また、学習会は各大学の点訳サークル同士でそれぞれの活動の内容などの情報を交換しあう場でもあります。ですから、サークル同士のネットワークづくりの場としても、関西SLはその役割を担っています。さらに、視覚障害者と晴眼者がごく自然につきあえるように、交流会や年に2回の合宿(観光 ディスカッションなど)も企画しています。
以上が各年度で行っている主な活動です。上からも分かるように、関西SLの活動目的とは、以下の3点だと言えます。
(1)視覚障害学生の学内環境改善
(2)各大学の点訳サークルのネットワーク化
(3)視覚障害者と晴眼者との多面的相互理解の推進
最近の視覚障害学生の学内環境を見てみると、関西SLの設立当初(今から30年余り前)に比べると、かなりの面で改善が見られます。今日では、点字受験や拡大文字受験などによる視覚障害者の大学進学率が増加するにつれて、教科書や参考資料の点訳、授業時や試験時の配慮、点字ブロックの敷設、視覚障害学生用の機器や点訳者用のパソコンの導入など、晴眼者と同等に学習・研究するために、視覚障害学生が必要な学内環境を大学側で整備しようという動きが出てきていることは確かです。
このような状況の中で、関西SLはもう学内環境問題に取り組む必要がないのかというと、決してそんなことはありません。一方では、点字受験すら認めていない大学や、入学後の配慮を全くしないという大学もあります。また、学内環境整備に積極的に取り組んでいる大学であっても、その取り組みに視覚障害者のニーズが必ずしも反映されていないといった、誠に残念なケースが往々にして見受けられます。
ですから、今後も視覚障害学生に対する学内環境整備を大学側に求めていくということは、関西SLの活動目的であることには変わりありません。そのため、学習会やアンケートを通して、まずは問題点を明確にすることに努めています。
しかしながら、こうした問題に立ち向かうには、視覚障害者と晴眼者との多面的な相互理解、いわゆる「心のバリアフリー」が重要です。なぜならば、視覚障害学生の学内環境問題を考える時、「視覚障害者に対する理解」がなければ一向に改善されないでしょうし、改善されたとしても、そこに「視覚障害者に対する理解」がなければ、真に問題が解決したとは言い難いからです。ですから、交流会やレクリエーションにも取り組み、実際に視覚障害者と晴眼者とが接することで両者が壁を乗り越え、お互いに理解しあう場を提供しています。
学内に限定せず、社会全体の問題として考えた時、私達の活動の最終目標とすべきは、「心のバリアフリー」が実現された社会であります。2002年度は、この「心のバリアフリー」に焦点を当て、学習面に関することだけではなく、視覚障害学生の生活全般にわたるあらゆる問題に取り組んでいきます。例えば、日常生活や社会活動、友人などとの人間関係、就職や恋愛・結婚などにおける問題です。各行事を通して、関西SLから社会に訴えかけられるような活動をしていきたいと考えています。
関西SLの学習会や交流会などを通じて、視覚障害者と晴眼者とが実際につきあっていく中で、そこでしか得られない新しい発見がお互いにあると思います。一人でも多くの方に、この活動の趣旨に賛同していただき、多数の方に関西SLの企画に参加していただけることを心よりお待ちしています。各行事が有意義な場となるように役員全員が努力して参りますので、よろしくお願いします。
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